日本ダービーで2番人気の競走馬のスキルヴィングがゴール直後に倒れ、そのまま死亡するというショッキングなことがありました。理由としては急性心不全をによることだそうですが、いったいどうしてそんなことがおこったのか?調べてみました。
馬の急性心不全とは
馬の急性心不全は、心臓が正常に血液を体全体に送り出すことができなくなる状態を指します。急性心不全は通常、何らかの基礎疾患や急性の心臓障害の結果として発生します。
心不全が発生すると、心臓は必要な酸素と栄養素を体全体に適切に供給することができなくなります。これにより、馬は運動不耐症、呼吸困難、不規則な心拍、倦怠感、食欲不振などの症状を示す可能性があります。
心不全の原因には以下のようなものがあります:
- 心筋症:心筋症は心臓の筋肉が病的に変化する病気で、それにより心臓の機能が低下します。
- 心臓バルブの疾患:心臓のバルブが正常に機能しない場合、血液の流れが阻害され、心臓に余計な負担をかけます。
- 心リズムの異常:不規則な心拍(心臓のリズムの異常)は心不全の一因となります。
ただ、この急死したスキルヴィングはG2である青葉賞の覇者であり何らかの疾患や病気があったとは思いにくいと思われますがサラブレットゆえのなにかわかりにくい疾患でもあったのでしょうか。サラブレットに多いと思われる病気について調べてみました。
サラブレットの病気について
サラブレッドは適度のエクササイズと健康的な食事、適切な休息を必要とする高度に訓練されたアスリートと考えることができます。それらのバランスが崩れると、体調不良や病気につながる可能性があります。特に競走馬には以下のような一般的な病気や問題があります:
- 蹄の問題:サラブレッドは蹄が特に繊細で、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。これには蹄葉炎(ランミニティス)、裂蹄、蹄球炎などが含まれます。
- 関節の問題:競走馬は関節に多大な負担をかけるため、関節炎や腱の損傷などのリスクが高くなります。
- 消化器系の問題:サラブレッドは胃潰瘍やコリックなどの消化器系の問題に苦しむことがよくあります。これはストレス、食事の変化、または運動の影響を受ける可能性があります。
- 呼吸器系の問題:過酷なトレーニングと競走は馬の肺に負担をかけ、しばしば「運動誘発性肺出血(EIPH)」などの問題を引き起こします。
- 感染症:インフルエンザ、ヘルペスウイルス、ストレプトコッカスなどの感染症も競走馬に影響を及ぼすことがあります。
特に呼吸器系について深堀してみます。
以下にいくつかの主要なものを挙げてみます:
- 運動誘発性肺出血(EIPH):これは競走馬に特に一般的な問題で、運動によって肺の血管が破裂し、血液が肺内に漏れ出ることを指します。この問題は訓練中やレース中に特に顕著になります。重度のEIPHは競走馬のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。
- 肺炎:馬はバクテリア、ウイルス、寄生虫などによって肺炎を発症する可能性があります。この病気は呼吸困難、鼻からの異常な排出物、発熱、食欲不振などの症状を引き起こす可能性があります。
- 喘鳴症:これは馬の気道の一部が正常に機能しない状態を指します。喘鳴症は馬が運動するときに特に鳴き声を発することからその名前がつけられました。重度の場合、この問題は手術でしか解決できないことがあります。
- アレルギー:馬は人間と同様にアレルギー反応を示すことがあります。これは特定の物質(花粉、ダニ、カビなど)に対する過敏反応で、肺の炎症や気管支喘息を引き起こす可能性があります。
これらの呼吸器系の問題で運動誘発性肺出血が訓練中やレース中に特に顕著になるとあり、急性心不全と何等か関係があるのでしょうか。
運動誘発性肺出血と急性心不全の関係について
運動誘発性肺出血(EIPH)と心不全は異なる疾患ですが、共通する要素は、両者とも馬の体への過度な運動ストレスが引き金となる可能性があるという点です。
EIPHは、運動中に肺の細い血管が破裂し、血液が肺内に漏れ出る症状を指します。これは、競走馬の運動負荷が高いために起こる可能性があります。EIPHの程度は馬によって異なり、軽度の場合はほとんど症状が現れないこともありますが、重度の場合には呼吸困難や競技パフォーマンスの低下を引き起こすことがあります。
一方、心不全は心臓が血液を体全体に適切に送り出すことができなくなる状態を指します。これは、心筋症や心臓のバルブの問題、心リズムの異常など、さまざまな原因によって引き起こされる可能性があります。運動負荷が高い競走馬は、心臓に過度のストレスをかけることで心不全のリスクを高める可能性があります。
異なる疾患ながら、考えられる原因としてストレスが共通するようです。
サラブレットの特性とストレス考察から
サラブレッドは、競馬における高いパフォーマンスを達成するために数世紀にわたり厳選され、繁殖されてきた品種であるため、生まれながら高度な競技パフォーマンスを発揮するための訓練をうけるのが運命づけられているとも言えます。今回死亡したスキルヴィングは4月末のG2を優勝し、今回のG1にたいして大きな期待をかけられていたでしょう。そして、この1か月弱の大会に向けての調整としてトレーニングをつんでいたのと考えられます。その中でなんらか大きな負荷や馬自身がストレスを感じていた可能性があるでしょう。
馬は大変頭がいい動物と聞きます、自分に対して掛けられる期待を感じ取り頑張っていたのかもしれません。
崩れ落ちたシーンが衝撃でしたが騎手が下りるのを待っていたかのようなタイミングに見えました。
その姿は命が燃え尽きそうな苦しいさなかに人を思いやっているようにも見え胸がつかえてきます。
まだ若い馬だそうですが、その姿は多くの人の記憶に残るでしょう。安らかに眠ってほしいと心から思います。